たべたもの

どんなものを食べているか言ってみたまえ。君がどんな人間であるかを言いあててみせよう。(ブリア=サヴァラン)

韓国海苔

 部屋にこもって仕事をしていたら「今から行く」と押しの強いCさんのメッセージが入った。行くったって休日で家には超絶無愛想な夫と引き篭もりの子供がいる。おまけに私は締め切りが立て込んで修羅場ってる。しかしそこは私の交友範囲でも押しの強さでダントツ1位のCさんのこと、数分後に駅前に着くと言うので慌てて家を出た。

 約束の場所で私はCさんをなかなか見つけられなかった。Cさんも私がわからなかったらしい。そうかもしれない。着替える暇がなかったから、ふだん家にいるまま、ウールの着物に毛糸の羽織をはおっていたのだ。Cさんといえば、革ジャンにハンチング帽にサングラス。職場でいつも見ているスーツ姿とは別人である。

 「なんでそんなお手伝いさんの格好してるの?」私を見つけたCさんにいきなり詰問される。仲居さんに見えるのだろうか……。日本人が着物着てて何が悪い。Cさんこそなんちゅう格好してるんですか、と言い返すと、「かっこいいでしょー、惚れたでしょー」とサングラスに手をやりながら自分に酔っているご様子。「あのー、似合ってないと思うけど」と正直に申し上げると、「あ、これ女房からね」と紙袋を渡された。……人の言うことぜんぜん聞いてない。

 さて渡された袋は、大きさのわりにとても軽かった。開けると、中には韓国海苔がたくさん入っていた。

 嵐のようにやってきたCさんは、海苔を渡すとまた嵐のように去っていった。私は帰宅するとさっそくおにぎりを作って海苔で巻いた。韓国海苔は日本の味付け海苔より味が濃いので、ご飯に塩はしないことにした。

 いただいた海苔はよく見かけるメーカーとは違うところのもので、よく見かけるところのものよりも上品な味がした。Cさんのお勧めの食べ方はそのままビールのつまみにするというものだ。私はレタスのサラダにドレッシング代わりにちぎってあえるのもいいと思う。奥さま、おいしい海苔をどうもありがとう!